神奈川県秦野市にある築39年の木造戸建て住宅にて、外基礎、特に「通風口(換気口)まわり」の基礎補強工事を行いました。
一般的に、築年数が経過した住宅の外基礎を眺めたとき、もっともひび割れや傷みが発生しやすいのがこの通風口(開口部)の角やその周辺です。
今回は、地震による揺れや経年による乾燥収縮の負荷が集中しやすいこのデリケートな場所を、コンクリートを解体することなく強固に補強した施工の様子を振り返ります。
- 築39年の住宅において、最も負荷がかかりやすい「外基礎の通風口まわり」を狙って部分補強を行いました。
- コンクリートの解体や大規模な打ち直しをせず、引張強度の極めて高い「アラミド繊維シート」を用いて強度を向上させています。
- 下塗り、中塗り、アラミド繊維シート、上塗りの丁寧な多層工程で、基礎とシートを一体化させました。
- 敷地内の砂利や植栽、設備配管などに細心の注意を払いながら、周囲を傷つけない手作業で進めています。
築39年の経年と「通風口まわり」に劣化が集中する理由
秦野市のこちらの住宅は築39年が経過しており、基礎は長年の荷重や気候変化による収縮を支え続けてきました。
ここで重要になるのが、基礎にある「通風口(換気口)」の存在です。
床下の換気を行うために欠かせない開口部ですが、構造的には「コンクリートに穴があいている状態」であるため、地震の揺れや建物の重みによる応力(ひずみ)がこの四隅に集中しやすくなります。
実際にこちらの現場でも、通風口の角から地面に向かって、あるいは斜め上に向かって、細かなひび割れや経年によるコンクリート表面の脆弱化が見られました。
築39年という年数を考えると、基礎全体をすべて壊して造り直すのは大がかりな費用と時間がかかります。
そこで今回は、まだ十分にしっかりしている箇所はそのまま活かし、負荷が集中して弱点になりやすい通風口まわりをピンポイントで補強する、アラミド繊維シートによる「部分的な構造補強」が現実的かつ効果的であると判断しました。
なぜ「アラミド繊維シート」による部分補強を選んだのか
今回採用したのは、引張強度がきわめて高い特殊な繊維「アラミド繊維シート」を、専用のエポキシ樹脂で基礎の表面に貼り付ける工法です。
通風口のまわりは、ただひび割れを埋めるだけでは、地震や地盤の微弱な動きでまたすぐに同じ場所にひびが入ってしまいます。
引っ張られる力にとても強いアラミドシートを貼り付けることで、基礎そのものの引張強度を高めて、ひび割れの再発や拡大を抑え込むのが狙いです。
このシートを専用の樹脂でガッチリと固めることで、鉄筋コンクリートと同等以上の粘り強さを持たせることができます。
施工プロセス:外基礎の通風口まわりを補強する手作業
それでは、実際の工事の流れを写真とともに解説します。
工事前の状態です。
まずは基礎表面の汚れやコケ、劣化した塗膜を手作業でしっかりと落とします。
下地が汚れたままだと、この後塗る材料が密着しません。
通風口の格子部分や、すぐ下にある配管(マス)、周囲の砂利を傷つけないよう慎重に進めます。

清掃が終わった基礎に、下地処理剤(プライマー)を均一に塗布します。
これはコンクリート内部に浸透して下地を補強し、この後に貼り付けるアラミド繊維シートや樹脂との密着性を格段に高めるための重要プロセスです。

エポキシ樹脂の保護・補強剤を塗布した後、強靭な「アラミド繊維シート10cm幅」を通風口のまわり(特に負荷のかかりやすい縦・横の境界部分)に隙間なく貼り付けます。
シートの中に空気が残ると補強効果が半減するため、念入りに中の空気を押し出し、樹脂を完全に染み込ませて基礎と一体化させます。
この「黄色い帯」のように見えている部分がアラミド繊維シートです。

アラミドシートの上に、さらに保護・補強剤を重ね塗り(上塗り)して厚みを持たせ、完全にコーティングします。
これで外からの紫外線や雨水、湿気の侵入をブロックし、繊維と基礎を長期にわたって保護します。

現場で直面した「職人の工夫と配慮」
屋外の作業、それも地面に近い「犬走り」や砂利スペースでの作業は、思った以上に制限が多いものです。
今回の現場では、基礎のすぐそばに庭石や植栽、雨樋の配管、エアコンの室外機、さらに作業スペースのすぐ脇に仮置きされた資材がありました。
これらを動かしたり、傷つけたりしないよう、また通風口の「角」や配管の裏側などは樹脂の塗り残しがないように細心の注意を払いました。
「見えない部分だから」と雑に塗るのではなく、こういった狭小部や境界部こそ、職人の技と丁寧さが仕上がりに直結します。
基礎補強に関するよくある質問(FAQ)
まとめ:弱点を見極めて、必要な場所を適切に守る
秦野市の築39年住宅で行った今回の工事は、傷みの出やすい「外基礎の通風口まわり」にフォーカスした、極めて費用対効果の高い補強事例となりました。
家全体の基礎をすべて解体して造り直さなくても、最も負荷がかかる開口部(弱点)をアラミド繊維シートでしっかりつなぎ止めることで、これ以上の劣化の進行を防ぎ、地震の引き裂く力に対する抵抗力を大幅に引き上げることができます。
「うちの基礎、通風口のまわりにひび割れがあるな」「築年数が経っているけれど、どこを補強すればいいのだろう」と気になった方は、まずは基礎の状態を正しく知ることから始めてみてください。
基礎の状態や必要な補強の範囲は、それぞれの家や環境によって全く異なります。
他社から「基礎全体が危険だ」「すぐに全面工事が必要」などと指摘されて不安を感じている場合でも、実は今回の事例のように「部分的な補強」で十分に住まいの安全を維持できるケースは少なくありません。
まずは、本当に工事が必要なのか、どの程度の範囲が適切なのか、信頼できる専門家に客観的なセカンドオピニオン(診断)を依頼してみることをおすすめします。
