東京都足立区にある木造住宅の床下調査に入りました。
築25年を迎えた建物です。
足立区は荒川や隅田川、中川などに挟まれた沖積低地が多く、地盤が比較的軟らかい地域が点在しています。
軟弱地盤の上に建つ住宅では、長年のわずかな地盤の動きや振動が基礎にじわじわと伝わりやすく、築年数が経つにつれてコンクリートの状態を確認しておく重要度が高まります。
今回の現場で点検口から潜り込むと、目の前に現れたのは基礎の立ち上がりコンクリートと、そのすぐ手前を複雑に横切る何本もの配管でした。
- 足立区のような地盤が軟らかい地域では、築25年前後から床下基礎の状態把握が建物の維持に直結する
- 基礎のすぐ前に排水管や給水管が密集していても、配管を取り外さずにアラミド繊維シートで補強できる
- 施工は「下塗り・中塗り・シート貼り付け・上塗り」の4工程で、既存設備を傷めない手作業が基本となる
- 狭小部ではシートの浮きや樹脂の塗り残しが起こりやすいため、配管裏の隙間への丁寧なしごき作業が欠かせない
築25年の床下環境と足立区の地盤特性
2000年前後に建てられた住宅は、現在の耐震基準に近い設計が浸透し始めた時期にあたります。
基礎も無筋から鉄筋コンクリートへの移行が進んでいた年代ですが、25年の歳月が流れるとコンクリート表面の経年劣化や、乾燥収縮による細かなひび割れなどが目視で確認されるケースが増えてきます。
床下の状況を確認すると、コンクリート表面に細かなひび割れや経年による乾燥が見受けられました。
加えて特徴的だったのが、基礎の立ち上がり壁に沿うように、太い塩ビの排水管や曲がりくねった給水管、蛇腹ホースが張り巡らされている点です。
足立区の軟弱地盤エリアでは、不同沈下や微小な揺れが基礎に少しずつ歪みを与えることがあります。
大きな亀裂に発展する前に、基礎の引張強度を高めておく補強が必要と判断しました。
配管が密集する狭小部での施工判断
床下の基礎補強で一番の障害になるのが、基礎と設備配管の位置関係です。
今回の現場では、基礎のコンクリート面からわずか数センチ〜十数センチの距離に配管が並んでいました。
こうした狭小部では、重機や大型の器具を持ち込むことはできません。
また、配管を一時的に切り離して移動させると、設備の再接続費用や水漏れのリスクが余計に発生してしまいます。
床下の配管は年数が経つと硬化してもろくなっています。
道具が少し当たっただけでも破損する恐れがあるため、配管を無理に動かさず、隙間から慎重に手作業で施工を進める判断をしました。
今回採用した工法は、厚みがわずか1ミリ程度におさまる「アラミド繊維シート」による補強です。
アラミド繊維といった高強度繊維をエポキシ樹脂で基礎に密着させる工法であれば、基礎を外側に大きくふかす必要がありません。
配管との隙間が狭い場所でも、配管ルートを変えずに施工を完結できます。
アラミド繊維シートによる基礎補強の4工程
今回の補強は、下塗りから上塗りまでの合計4工程で進めました。
狭い空間で樹脂を均一に塗り込み、シートを気泡なく密着させる手作業の連続です。

コンクリート表面の粉塵を掃除した後、浸透性の高いプライマーをムラなく塗布します。
基礎コンクリートとこの後塗る樹脂との密着性を高める重要な下準備です。

下塗りが硬化した後、アラミド繊維シートを接着・含浸させるためのエポキシ樹脂を厚めに塗り広げます。
この樹脂が接着剤の役割を果たし、基礎と繊維を一体化させます。
中塗り樹脂が乾かないうちに、あらかじめ寸法を測って裁断しておいた黄色のメッシュ状アラミド繊維シートを基礎面に貼り付けます。
繊維の網目に樹脂をしっかり染み込ませながら、気泡(空気だまり)を外へ押し出します。
配管の下をくぐらせる際、繊維が斜めに引っ張られてヨレないよう、端から順番に押さえていきました。

貼り付けたアラミド繊維の上から、仕上げのエポキシ樹脂を均一に重ね塗りします。
繊維を外部の湿気や紫外線、ほこりから保護し、長期的な耐久性を確保するための工程です。
表面が滑らかなグレーに仕上がれば完了となります。

配管裏の作業で職人が気を配るポイント
配管裏の基礎補強は、広い外壁の工事とは全く異なる集中力が求められます。
這いつくばった姿勢で腕を伸ばし続ける作業になるため、以下の点に注意を払いました。
- 配管の保護:工具やローラーの金具が配管の継ぎ手に強く当たらないよう、常に手元を目視しながら動かす
- シートの浮き防止:配管が邪魔な死角は、シートの角が浮き上がらないようさらに注意深く押さえ込む
- 均一な樹脂含浸:樹脂の量が少なすぎるとシートの強度が発揮できず、多すぎると垂れて配管に付着するため、塗布量を一定にコントロールする
- 床下の換気:狭い空間に有機溶剤や樹脂の臭気がこもらないよう、できる限り換気を行い作業環境を保つ
施工後は、配管の裏側までシートが基礎の立ち上がりにしっかり追従し、浮きやシワのない状態に仕上がりました。
築25年前後の床下基礎補強に関するよくある質問
まとめ:配管が密集する床下の基礎補強を振り返って
今回の足立区・築25年の現場では、経年変化が見られる基礎に対して、配管を動かさずにアラミド繊維シートで補強を施しました。
床下の状況は外からは見えません。
基礎のひび割れや劣化の有無だけでなく、「配管がどこをどう通っているか」「作業スペースがどれくらい残されているか」によって、選ぶべき工法や施工手順は大きく変わります。
もし訪問業者などから「床下の基礎が危険なのですぐに大規模な工事が必要だ」と指摘された場合でも、慌てて契約する必要はありません。
配管の位置や基礎の構造を正しく見極めれば、必要最小限の範囲で住まいの強度を維持する現実的な方法は見つかります。
まずは複数の専門家の目で、客観的な診断を受けてみることをおすすめします。
