今回施工に入ったのは、千葉県千葉市美浜区に建つ築32年の木造住宅です。
美浜区は海に近く、地盤の水位や湿気の影響を比較的受けやすい地域特性があります。
築30年を超えたこの年代の住宅は、床下一面にコンクリートを打つ「ベタ基礎」ではなく、基礎の立ち上がり以外は地面の土がむき出しになっている「布基礎」が多く見られます。
今回の現場も土間が土のままの状態で、地面からの湿気が基礎コンクリートへ長年触れ続けている環境でした。
点検時に特に着目したのが、基礎の立ち上がり壁だけでなく、上屋の重みを垂直に支えている四角い「コンクリート柱(独立基礎・柱脚部)」の状態です。
表面に過去の防湿・防腐材の塗布跡や経年劣化が見られ、大きな荷重を受ける要所であるため、今回は壁面とあわせてこの柱部分を集中的に補強することにしました。
- 築30年超の布基礎(土間露出)では、湿気によるコンクリートの劣化進行に注意が必要
- 上からの荷重が集中する「基礎柱」は、耐震性・支持力を維持するための要となる部位
- 四角い柱の角を包み込むようにアラミド繊維シートを巻き付け、せん断破壊を防止
- 下塗り・中塗り・シート貼り付け・上塗りの4工程を確実に重ねてコンクリートと一体化させる
千葉県千葉市美浜区・築32年住宅の床下環境と基礎の状態
床下に潜って確認したところ、基礎立ち上がりと手前にあるコンクリート柱の表面に、経年による色あせと細かな表面劣化が確認できました。
1990年代前半(新耐震基準導入後)に建てられた住宅ですが、当時はまだ床下に防湿コンクリートを打たない設計が一般的でした。
美浜区のような埋立地や海沿いのエリアは地下水位が高くなりやすく、地面からの湿気が床下に滞留しがちです。
湿気を長年吸放出しているコンクリートは、内部の中性化が少しずつ進み、表面の脆弱化や微細なひび割れが起こりやすくなります。
外周の基礎だけでなく、床下の内部で建物を支えている構造部までしっかり確認することが欠かせません。
なぜ立ち上がり基礎だけでなく「基礎柱」の補強を重視したのか
今回、立ち上がり基礎の補強と同時に、手前に位置する四角いコンクリート柱への施工に重点を置きました。
一般的な基礎の立ち上がり壁面は「横に長い面」で揺れや荷重を受け止めますが、独立して立つ柱部分は、柱や梁を通じて建物の垂直荷重がピンポイントで加わる場所です。
地震の際には上からの重みと横揺れが同時にかかるため、コンクリートが斜めにひび割れて潰れる「せん断破壊」を起こしやすい特徴があります。
平面の基礎壁を直すだけで、荷重を支える柱が弱っていたら意味がありません。
柱の四隅を包み込むようにシートを巻くことで、外側からコンクリートの破裂を抑え込む拘束効果が生まれます。
引張強度の高いアラミド繊維シートを柱の角に沿って追従させ、接着樹脂で強固に定着させることで、コンクリート自体の粘り強さを引き出し、荷重に対する耐久力を補います。
アラミド繊維シート施工の4工程
今回の工事では、コンクリート下地の調整から仕上げの保護補強まで、4つの工程(下塗り・中塗り・アラミド・上塗り)で施工を進めました。
狭小で足場が土という現場条件下でも、工程ごとの乾燥時間と密着性の確保を最優先に作業を行っています。

まずはコンクリート表面のホコリを取り除き、エポキシ系の下塗り材(プライマー)を均一に塗布します。
乾燥していたコンクリート表面にプライマーをしっかり浸透させることで、コンクリート自体の強度を高め、次に塗る接着樹脂との密着性を引き上げます。
下地が濡れ色になるまで塗り残しなく浸透させることが肝心です。

下塗りが乾燥した後、アラミド繊維シートを貼り付けるための高粘度エポキシ樹脂(中塗り材)を塗り広げます。
この樹脂がシートとコンクリートを完全に一体化させる接着層になります。
中塗り樹脂が硬化する前に、黄色い網目状のアラミド繊維シートを貼り付けます。
基礎柱の出隅(角の部分)はシートが浮きやすいため、中心から外側へ空気を押し出しながら、コンクリートの角にぴったり沿わせて密着させます。
繊維に樹脂を完全に含浸させることが、強度を出すための絶対条件です。

シート貼り付け後、さらに上から樹脂を塗り重ねて繊維を完全に閉じ込めます。
表面を保護トップコートで滑らかに仕上げることで、アラミド繊維を湿気や摩耗から守ります。
施工前と比べ、柱全体が強固な複合材の被覆層で覆われた状態になりました。

基礎補強工事に関するよくある質問(FAQ)
まとめ:柱と基礎を一体で補強し、長期的な安心をつくる
今回の千葉県千葉市美浜区の現場では、以下の点に配慮して施工を行いました。
- 築32年・土間露出の床下環境に合わせ、湿気に強いエポキシ樹脂とアラミド繊維を採用
- 上からの集中荷重を受けるコンクリート柱へシートを巻き付け、耐力を補強
- 下塗り・中塗り・シート貼り・上塗りの4工程を丁寧に行い、浮きのない完全密着を実現
築年数が経過した住宅では、基礎の見た目だけで工事内容を決めるのではなく、「どこが一番建物を支えているか」という構造的な視点を持った診断が不可欠です。
もし点検で「基礎全体を取り壊して作り直す必要がある」「高額な工事を今すぐしないと家が潰れる」といった指摘を受け、判断に迷われた際は、過不足のない補強範囲を見極めるためにも第三者の視点による客観的な点検をご活用ください。
