埼玉県和光市にある、築31年を迎えた木造住宅の床下で行った基礎補強の現場事例です。
和光市は武蔵野台地の高台と低地が入り組む起伏の多い地形で、道路環境や立地によって住宅基礎への日常的な振動や湿気の影響が異なりやすい特徴があります。
今回調査したお住まいでは、基礎の外周部に構造を揺るがすような著しい破壊は見られなかったものの、築30年を超えてこれからの地震に対する耐力や、基礎コンクリートの経年変化を心配される状況でした。
床下に潜ると、地面一面に防湿用の調湿砂利が綺麗に敷き詰められており、過去にも湿気対策に配慮されていた様子が分かります。
一方で、基礎立ち上がり部分そのものの引張強度を高めるような補強は施されていませんでした。
- 築31年を経過した基礎に対し、重機を使わず床下からのアラミド繊維シート施工で引張耐力を補強
- 排水配管が立ち上がる奥の狭小スペースも、繊維シートを途中で切断せず連続して密着施工
- 敷設された調湿砂利を荒らさず、居住したまま粉じんや臭気を抑えたエポキシ樹脂で一体化
築31年の基礎状態と和光市の立地環境
建築から31年が経過した住宅の基礎は、1990年代中盤に施工されたものです。
2000年に改正された現行の建築基準法や住宅品質確保法(品確法)より前の建物であるため、鉄筋の配筋量やかぶり厚の基準が現在ほど細かく規定されていなかった年代に該当します。
基礎の表面を目視で確認したところ、深く貫通するような大きなクラック(ひび割れ)は発生していませんでした。
ただ、築年数の経過に伴うコンクリートの乾燥収縮や微小な揺れの蓄積により、引っ張りに対する粘り強さは新築時と比べて低下していきます。
和光市のように高低差があり、幹線道路の交通振動が日常的に伝わりやすい立地では、表面上に大きな亀裂が出ていなくても、内部の耐力をあらかじめ補っておく意味合いが大きくなります。
床下の地面には白い調湿砂利がしっかり敷かれており、土台の木部にも腐朽は見られず乾いた良好な状態でした。
基礎全体を壊して作り直すような大がかりな工事を行う必要はなく、既存の健全なコンクリートをそのまま活かしながら、強度をピンポイントで引き上げる工法が合致していると判断しました。
なぜアラミド繊維シート補強を選んだのか
今回の現場で採用したのは、炭素繊維と並び高い引張強度を持つ「アラミド繊維シート」による補強です。
コンクリートは上からの重み(圧縮)には非常に強い反面、地震の横揺れによって生じる「引っ張り」や「曲げ」の力には弱い性質を持っています。
アラミド繊維シートは鉄の数倍におよぶ引張強度を持ちながら、軽量で柔軟性に優れているのが特徴です。
ひび割れ部分だけに樹脂を詰める部分的な処置とは異なり、基礎立ち上がりの中央部分に幅広く帯状のシートを接着させることで、基礎全体を一体化させて粘りを持たせることができます。
外周部を掘削してコンクリートを打ち増しする必要がなく、床下の点検口から資材を搬入して生活空間に影響を与えずに完結できる点も、今回の住まいにとって大きな利点となりました。
床下配管の裏側まで通す施工の工夫と手順
今回の床下で特に注意を払ったのが、基礎のすぐ内側に立ち上がっているグレーの排水配管まわりです。
配管と基礎コンクリートの隙間は狭く、工具や手が入りにくい場所でした。
しかし、こうした障害物があるからといって手前で補強シートを切断してしまうと、地震時にかかる引張力がその継ぎ目で途切れてしまいます。
作業性は落ちますが、シートを連続させたまま配管の裏側へ通して密着させる施工を行いました。

基礎表面の脆弱層や汚れをケレン作業で除去し、平滑に整えた上で専用プライマーを塗布します。
コンクリート内部へプライマーを浸透させ、補強樹脂との密着力を確保します。

アラミド繊維シートを貼り付けるため保護補強材を基礎表面へ均一な厚みで塗布します。
配管の裏側など見えにくい箇所も塗り残しがないよう確認を進めます。
帯状のアラミド繊維シートを基礎立ち上がりの中央部に沿って貼り付けます。
空気を押し出しながら、配管の裏側も途切れさせず、1本の帯として通しました。

含浸させた樹脂の上から、保護層となる保護補強材を均一に塗り重ねます。
外気や湿気から繊維層を守り、長期にわたって安定した状態を保てるよう表面を保護して完了です。

排水配管の裏側は指先などで下地とシートの密着具合を確かめました。
スペースが狭くてもシートを切らずに連続して通すことが、揺れに対する本来の強度を出すための譲れないポイントです。
和光市の住宅基礎補強に関するよくある質問
まとめ:築31年の基礎に必要な補強とこれからの維持管理
今回の和光市の現場では、築31年という建物の背景、床下に防湿砂利が敷かれた湿気環境、そして排水配管の配置状況を確認した上で、アラミド繊維シートによる補強を行いました。
すべての基礎に対して大がかりな工事を行う必要はありません。
既存の基礎が持っている健全な強さを確認し、足りない引張耐力をピンポイントで補うことで、住まいへの解体負担や工事規模を最小限に抑えることができます。
基礎の劣化度合いや耐力は、築年数という数字だけで一律に決まるものではありません。
地盤の形状や床下環境、コンクリートの現状によって、本当に必要な対策は一軒ごとに異なります。
もし業者などから「築30年を過ぎているから今すぐ基礎を補強しないと危険だ」と指摘されて判断に迷っている場合は、焦って工事を決めてしまう前に、客観的な診断を受けて基礎の本当の状態を確かめてみることをおすすめします。
現場の事実に基づいた正確な状況把握が、住まいを長く保つための第一歩になります。
