築30年を超えた木造住宅では、外壁や室内には目立ったトラブルがなくても、床下に入ると基礎コンクリートに劣化やひび割れが生じているケースが少なくありません。
今回の現場は、千葉県印西市にある築34年の住宅です。
床下の点検を行ったところ、基礎の立ち上がり面や換気を行う通気口(開口部)の角周辺に、劣化が確認されました。
土台や大引きが組まれた床下の限られた空間で、どのようにコンクリートの状態を見極め、補強を進めたのか。
実際の作業手順と現場での判断内容を振り返ります。
- 築34年が経過した住宅の床下で、基礎立ち上がり面と通気口に中性化などの劣化を確認した
- 下処理材から中塗り、アラミド繊維シート貼り付け、上塗り保護の工程で躯体と一体化させた
- 家全体の基礎を闇雲に工事するのではなく、すでに劣化がある箇所や負荷がかかりやすい開口部などを優先して施工した
なぜアラミド繊維シートによる補強を選んだのか
床下へ潜って確認したところ、築34年という年数を経ていることもあり、コンクリートの表面は経年による乾燥や中性化が進んでいました。
指で触れると細かな粉がつくような状態です。
今回の現場では、基礎の補強材として「アラミド繊維シート(25cm幅)」を使用する工法を選択しました。
アラミド繊維は、高い引張強度を持ちながら非常に軽量で薄い素材です。
橋梁の橋脚補強やトンネルの補修など、土木・建築分野の耐震補強でも広く使われています。
コンクリートという材料は、上から押し潰される「圧縮力」には高い強度を発揮しますが、左右に引っ張られる「引張力」にはあまり強くありません。
地震の揺れや地盤の微小な動きによって引っ張る力が働くと、コンクリートが耐えきれずにクラックが発生します。
今回の基礎立ち上がりと通気口まわりに対して、引張力に強いアラミド繊維シートをエポキシ樹脂で密着・含浸させることで、コンクリート表面を強靭な材質で補強します。
増し打ちコンクリートのように大掛かりな工事やコンクリートの重量を増やさず、既存の建物を解体することなく施工できる点も、今回の工事の大きな利点でした。
床下の狭小部と通気口まわりの施工手順
床下は頭上に土台や大引きなどの木材が迫っており、作業姿勢が著しく制限される空間です。
配管や木部を汚さないよう注意し、以下の手順で施工を進めました。
まずはコンクリート表面の下地処理です。
築34年が経過したコンクリートは表面の油分が抜け、水分の吸い込みが激しい傾向にあります。
下処理剤であるプライマーをしっかりと塗り込み、コンクリート内部へ浸透させて表面を固めました。
コンクリートが乾燥して粉を吹いている状態でシートを貼っても、十分な密着力が得られません。
下塗りプライマーを均一に浸透させ、吸い込みを止める工程が仕上がりと耐久性を左右します。
プライマーの乾燥後、保護・補強剤であるエポキシ樹脂を中塗りとして塗布します。
樹脂が乾かないうちに、25cm幅のアラミド繊維シートを覆うように配置しました。
シートの中心から外側へ空気を押し出し、樹脂を繊維の網目にしっかりと含浸させていきます。
シートが定着した段階で、さらに上から保護・補強剤を重ね塗りします。
繊維を完全に樹脂の中に閉じ込め、表面を保護層で覆うことで作業を完了しました。
今回の現場で施工範囲を限定した理由
今回の工事では、住宅全体の基礎をすべて補強するのではなく、劣化が確認された立ち上がり面と通気口周辺に対象を絞って施工しています。
住宅の基礎は、日当たりや通気性、建物の荷重バランスによって、場所ごとに劣化の進み方が異なります。
もちろん全体を補強した方がいいのは間違い無いのですが、問題が生じていない部分まで施工範囲を広げると、費用面でも施主様への負担が大きくなってしまいます。
必要な箇所に絞って適切な工法を施すことが、費用を抑えながら建物の強度を維持する上で現実的な判断となります。
よくある質問(FAQ)
まとめ:築34年の基礎に見られたクラックと床下補強のポイント
千葉県印西市で行った今回の工事では、築34年の床下環境において、通気口周辺と立ち上がり面に確認された劣化に対し、アラミド繊維シートを用いた補強を行いました。
中性化や経年で乾燥が進んだコンクリートに対しては、最初の下地処理を省かずに密着性を確保することが重要です。
また、すべての基礎を画一的に工事するのではなく、負荷がかかりやすい開口部や実際のクラック状況を見極め、必要な範囲に限定して手を打つことも費用面では重要になります。
床下の点検などで「基礎にひびが入っている」「すぐに家全体を補強しないと危険だ」といった指摘を受けると、どう対処すべきか判断に迷う方も多いはずです。
提示された工法や施工範囲が本当に現在の状態に見合っているのか、客観的な視点から冷静に状態を確かめてみたい場合は、専門知識を持つ別の窓口へセカンドオピニオンを求めてみるのも一つの方法です。

