千葉県八千代市にある築22年の木造住宅にて、基礎コンクリートの補強工事を行いました。
八千代市は下総台地の平坦面と新川沿いの低地が交差する地域であり、同じ市内でも土地を整備した時期や土地の細かな高低差や起伏によって地盤環境が異なります。
今回伺った建物は築20年を越えていましたが、基礎の外周部や床下を点検しても、建物の重さや地震などの力に耐える力がなくなるような大きなひび割れやコンクリートの欠損は見当たりませんでした。
土間コンクリートや立ち上がり部分も乾燥しており、一見すると補修の必要がない状態に見える基礎です。
それでも今回、アラミド繊維シートによる立ち上がり基礎の補強工事を実施しました。
大きな破損が起きてから直すのではなく、基礎が健全な段階で手を打つ「予防保全」としての施工です。
実際の床下の状態と、職人がどのような工程で作業を進めたのかをまとめました。
- 築22年が経過して目立つひび割れがなくても、コンクリートの引張力や耐震性を先回りで補う予防保全工事は有効
- 基礎表面が劣化せず強度が高いうちにアラミド繊維シートを施工することで、強度の高い基礎を保護し高い密着性を確保できる
- 下塗りから中塗り・アラミド繊維シート伏せ込み・上塗りまで、樹脂を均一に含浸させることが強度確保の要となる
築22年・八千代市の現場で確認した基礎の現状
点検口から床下へ進入し、基礎立ち上がりの全周と土間部分を順番に確認していきました。
築20年前後の住宅では、乾燥収縮によるヘアークラックや、配管が通っている周辺に細かなひび割れが見られるケースが珍しくありません。
しかし、こちらの現場は立ち上がりコンクリートの表面に大きなクラックはなく、ジャンカやコンクリートに混ぜる砂や砂利の露出も見られませんでした。
床下で支える金属製の柱にもグラつきはなく、床下の通気も良好に保たれています。
一般的に、基礎のひび割れ補修は幅0.3mm以上の構造クラックが見つかってから検討されることが大半です。
ただ、コンクリートは年数の経過とともに大気中の二酸化炭素に触れ、少しずつ中性化が内部へ進行していきます。
ひび割れが発生していない段階であっても、築20年を過ぎれば新築時と全く同じ粘り強さを保ち続けているわけではありません。
今回は、基礎コンクリート自体の形が綺麗に残っている今だからこそ、外的な補強層を密着させて将来のひび割れや変形を防ぐ判断となりました。
なぜクラックがない基礎にアラミド繊維シートを選んだのか
基礎補強の現場では、すでに発生しているひび割れに対してエポキシ樹脂を注入する工法と、繊維シートを貼り付けて面全体の引張強度を高める工法があります。
ひび割れがない状態の基礎に対して樹脂注入を行うことはできません。
注入する隙間が存在しないためです。
一方で、アラミド繊維シートによる補強は「面」で基礎を補強する工法です。
コンクリートは上からの圧縮には非常に強い反面、引っ張られる力には弱いという性質を持っています。
地震時に基礎へ水平方向や斜め方向の力が加わった際、最初に起きるのが引張力によるひび割れです。
下地に凹凸や激しいクラックがないため、削り作業や下地調整で基礎を傷めることなく、シート本来の接着力を活かせる状態でした。
すでに割れてしまった基礎にシートを貼る場合、事前のひび割れ注入や高さを揃える作業が欠かせません。
下地が骨組みや補強材でしっかりしている健全な基礎に施工することは、材料同士の接着ムラが出にくく、補強効果を安定して発揮させる意味で技術的な利点があります。
アラミド繊維シート補強の施工工程
今回の工事では、立ち上がり基礎の内周面を中心に、アラミド繊維シート(25cm幅)をエポキシ系樹脂で埋めていく工法を採用しました。

まずは基礎コンクリート表面の粉塵を清掃し、下処理剤であるプライマーを均一に塗布します。
コンクリート表面の吸い込みを抑え、後から塗るエポキシ樹脂との密着性を高める重要な下準備です。

プライマーが適度に硬化した後、保護・補強剤を中塗りとして立ち上がり面に塗布します。
その上から25cm幅のアラミド繊維シートを水平に張り込み、気泡を押し出しながら、シート全体へ樹脂を含浸させていきます。

- シート内部に空気が残ると接着不良の原因になるため、中央から外側へ入念に気泡を抜く
- 床を支える金属製の柱の根元や床下配管の周囲など、作業スペースが狭い箇所でもシートにしわや浮きを作らない
- 材料の使用時間を意識し、樹脂が硬化し始める前に確実に貼り付けを完了させる
シートを貼り付けた後、さらに上から保護・補強剤を重ね塗りしてアラミド繊維を完全に覆います。
繊維を樹脂で閉じ込めることで、外気や湿気から基礎を保護する層が形成されます。

塗布直後は樹脂特有の艶がありますが、完全に硬化すると強靭な補強層となって基礎立ち上がりと一体化します。
床下は配管や束が配置されており、場所によって隙間や間隔が異なります。
狭い箇所でも端がめくれたり浮いたりしないよう、入念に押さえ込みを行いました。
築20年以上の基礎補強に関するFAQ
まとめ:傷みが出る前の手入れが建物の基礎寿命を伸ばす
八千代市で行った今回の現場は、築22年という年月に対して基礎コンクリートの状態が良好に保たれている住宅でした。
基礎補強と聞くと、「大きなひび割れを埋める工事」や「崩れかけたコンクリートを直す工事」を連想される方が多いかもしれません。
しかし、コンクリートが健全な形を保っているうちにアラミド繊維シートのような強靭な素材で外側を補強しておくことは、将来的な補修費用を抑え、地震の揺れに対する粘り強さを保つための現実的な選択肢の一つです。
基礎の状態は、外側の立ち上がりだけでなく、床下に入って内側のコンクリートや湿気、配管周りまで確認しなければ正確には分かりません。
他社から基礎の劣化を指摘されて不安を感じている場合や、現状の基礎が本当に今すぐ補修を必要とする状態なのか判断に迷う場合は、特定の工法に偏らない客観的な視点を持った専門家に診断を依頼することをおすすめします。
