築27年を迎えた横浜市都筑区の木造住宅にて床下の進入調査を行ったところ、基礎の立ち上がりコンクリートに複数のひび割れ(クラック)が確認されました。
外壁や基礎の外側からは確認しにくい位置でしたが、床下の内部基礎において経年による劣化の兆候が現れていた現場です。
- 築27年が経過した床下基礎の立ち上がりクラックに対し、引張強度に優れたアラミド繊維シート補強工法を採用
- 地震時の応力が集中しやすい基礎のL字コーナー部を途切れさせずに連続施工し、基礎の一体性を強化
- 下塗り・中塗り・シート貼り付け・上塗りの4工程により、コンクリートと繊維を強固に密着させて保護
| 項目 | 内容 |
| 施工地域 | 神奈川県横浜市都筑区 |
| 建物構造・築年数 | 木造2階建て / 築27年 |
| 基礎構造 | 布基礎(防湿コンクリート敷設) |
| 確認された症状 | 床下基礎立ち上がり部のクラック、経年による表面劣化 |
| 採用工法 | アラミド繊維シート補強工法(下塗り・中塗り+シート・上塗り) |
築27年の基礎クラックと横浜市都筑区の地盤特性による影響
横浜市都筑区は港北ニュータウンを中心として良好な住宅街が広がる一方、多摩丘陵の起伏に富んだ地形を大規模に造成したエリアが多く見られます。
台地を削った「切土」と谷を埋めた「盛土」が同じ敷地内に混在するケースもあり、長い年月をかけて地盤がわずかに動いたり、湿気が床下に滞留しやすかったりする土地柄を持ちます。
今回の建物は築27年(1999年前後の建築)であり、建築基準法が大幅に改正された2000年より直前の時期に建てられています。
この年代の住宅は鉄筋コンクリート基礎が普及し始めていたものの、地盤調査の義務化や基礎コーナー部の配筋規定などは現在の基準ほど厳格ではありませんでした。
そのため、微細な地盤の動きや乾燥収縮の負荷が基礎の一部に偏って伝わり、ひび割れを招くケースが珍しくありません。
現地調査では、床下に潜り込まなければ目視できない基礎の立ち上がり部分にひび割れが確認されました。
基礎の内側は湿気の影響を受けやすく、表面から中性化が徐々に進行すると内部の鉄筋をサビから守るアルカリ性が損なわれていくため、早期の健全化が求められる状態でした。
アラミド繊維シートを選定した理由と構造耐力の補強
今回採用した「アラミド繊維シート工法」は、鋼材の数倍に達する引っ張り強度を持ち、宇宙・航空分野や橋梁の耐震補強にも用いられる高強度繊維を基礎表面に接着する補強技術です。
コンクリートは「圧縮される力」には極めて強い耐力を持ちますが、「引っ張られる力」には弱く、引っ張り強度は圧縮強度の約10分の1程度にとどまります。
基礎にひび割れが生じる主な要因も、この引っ張る力(引張応力)に耐えきれなくなることにあります。
アラミド繊維シートを専用のエポキシ樹脂でコンクリート表面に強固に接着・一体化させることで、基礎が引っ張られる力を繊維が代わりに受け止めます。
重機を搬入できない狭い床下空間であっても、基礎を壊さずに新築時以上の引っ張り耐力を付加できる点が大きな技術的利点となります。
弱点となりやすい「L字コーナー」を途切れなく補強する技術的意義
基礎の構造において、直交する基礎同士が交わる「L字コーナー(角部)」は、地震の揺れや建物のねじれが生じた際に最も大きな負荷が集中する部位です。
今回の施工において技術的に最も配慮した点は、基礎が直角に折れ曲がるコーナー部分でシートを切断せず、連続して一体的に貼り込んでいる点です。
もし角でシートを一度切ってしまうと、地震時に引張力がかかった際に継ぎ目から剥離が起き、補強効果が分断されてしまいます。
直角の入隅(内側の角)はシートが浮き上がりやすく、空気が内部に残りやすい難しい箇所です。
下地の角を丁寧に整えたうえで、繊維が突っ張らないよう均一に密着させ、コーナー全体を包み込むように施工することで、角部のせん断破壊(ズレて割れる力)を効果的に抑え込みます。

コンクリート表面の粉塵を清掃後、樹脂の吸い込みを均一にし、コンクリートと中塗り樹脂の密着性を最大限に高めるプライマーを塗布します。

アラミド繊維シートを浸透・接着させるためのベースとなるエポキシ樹脂をムラなく塗り拡げます。
中塗りが硬化する前にシートを素早く敷設し、L字コーナーを含めて中央から外側へ空気を完全に押し出しながら密着させます。

繊維シートの上から保護補強用の樹脂を塗布し、床下の湿気や紫外線から補強層を長期にわたって保護します。

コーナーの入隅はシートが引っ張られて角から浮きやすいため、中塗り樹脂を十分に馴染ませ、繊維の目をつぶさないよう脱泡ローラーで入念に密着させました。
築27年の基礎補強に関してよくある質問
まとめ:横浜市都筑区の住まいを守る基礎補強と客観的な診断の意義
今回の事例では、築27年が経過した床下基礎のクラックに対し、応力が集中するL字コーナーを途切れさせずにアラミド繊維シートで補強する工事を実施しました。
丘陵地特有の造成地が多い都筑区のようなエリアでは、敷地条件や築年数に応じた構造的負荷を正確に見極め、適切な下地処理と高精度なシート施工を行うことが建物の寿命延伸に直結します。
基礎の劣化状況や地盤条件は一軒ごとに異なり、表面的なひび割れ補修だけで十分な場合もあれば、耐力を補う抜本的な補強が必要なケースも存在します。
特定の工法に偏ることなく、構造の特性や劣化の根本原因を正しく見極めるためには、実績を持つ専門家による多角的な診断やセカンドオピニオンを取り入れることが大切です。
