東京都杉並区にある築35年の木造住宅にて、基礎の出っ張り(出隅部)を中心とした基礎補強工事を行いました。
現地調査を行ったところ、上部構造を支える基礎の立ち上がりに経年劣化が見られ、特に角部分への負荷対策が求められる状態でした。
- 築35年が経過した布基礎の出隅(角部)に対し、アラミド繊維シートによる補強工事を実施
- 荷重が集中しやすい出隅部分の面取りと下地調整を行い、シートの追従性と密着性を確保
- 下塗り・中塗り・シート貼り・上塗りの4工程により、基礎を解体せず引張強度を向上
| 項目 | 内容 |
| 施工地域 | 東京都杉並区 |
| 建物構造・築年数 | 木造2階建て / 築35年 |
| 基礎構造 | 布基礎 |
| 確認された症状 | 基礎立ち上がりおよび角部の経年劣化、表面摩耗 |
| 採用工法 | アラミド繊維シート補強工法(4工程) |
築35年の基礎構造と杉並区特有の立地環境
1990年前後の基礎構造と経年劣化の特徴
築35年の住宅は、1990年代初頭の建築基準に沿って建てられています。
1981年の新耐震基準は導入されていたものの、基礎の仕様に関しては現在主流の鉄筋コンクリート造ベタ基礎ではなく、無筋または配筋量の少ない布基礎が多く採用されていた年代です。
30年以上の歳月が経過すると、コンクリート内部のアルカリ性が外気中の炭酸ガスによって失われる中性化が進行しやすくなります。
鉄筋の有無にかかわらず、表面のモルタル浮きや細かなクラックが発生し、外力に対する耐久力が徐々に低下する傾向が見られます。
杉並区の地盤特性と基礎にかかる負荷
杉並区は武蔵野台地に広がる比較的安定した高台が多い反面、善福寺川や神田川、妙正寺川などの水系沿いには谷底低地が入り組んでいます。
高低差のある地形や川沿いのエリアでは、湿気が床下に滞留しやすく、基礎コンクリートが水分を吸放出する頻度が高くなります。
住宅密集地が多い地域柄、隣家との間隔が狭い現場も少なくありません。
大型重機を持ち込んだ大規模な解体工事が困難なケースが多く、既存の基礎を傷めずに耐力を向上させる工法が求められます。
荷重が集中する「基礎の出隅(出っ張り部分)」補強の難しさと重要性
建物の角に位置する基礎の出っ張り(出隅部)は、構造力学の観点からも極めて重要な箇所です。
柱や耐力壁からの垂直荷重に加え、地震発生時にはねじれや引き抜きの力が角部に集中します。
床下内部の基礎と外周部の基礎が交差するこの部位は、住まい全体の揺れを受け止める要となります。
出隅部分は直角に尖っているため、そのまま補強繊維シートを巻き付けると繊維が急激に折れ曲がり、強度が著しく低下します。
シートの反発力によって角から浮き上がり、内部に空気層(気泡)を残してしまう失敗が起きやすい場所でもあります。
下地処理の段階で角を滑らかに丸める面取りを行い、専用の補強ビードを配置して均一な下地を作ることが施工品質を左右します。
アラミド繊維シート補強における4つの施工工程
今回の現場では、下地処理を終えた後に4つのステップに分けて施工を進めました。

コンクリート素地への浸透性に優れたプライマーを塗布します。
脆弱になった表面を強化し、次に塗る中塗り樹脂との接着強度を高めるための工程です。

接着の主剤となる高粘度のエポキシ樹脂を、下地の上に均一な厚みで塗り広げます。
この樹脂がアラミド繊維シートに含浸することで、コンクリートと繊維が強固に一体化します。
中塗り樹脂が乾燥する前に、黄色の高強度アラミド繊維シートを貼り付けます。
繊維内部まで樹脂を染み込ませながら、気泡を完全に外へ押し出します。
特に出隅の曲面部分は浮きが発生しやすいため、テンションを均等にかけながら密着させます。

アラミド繊維の上からさらに樹脂を重ね塗りし、完全にシートを覆い隠します。
紫外線や雨水、外気の影響を遮断し、長期にわたって補強効果を維持させる保護層を形成します。

出隅の角にシートを巻き込む際、わずか数ミリの浮きができるだけで補強効果は著しく低下します。
角の丸み調整と脱泡ローラーによる入念な圧着が成否を分けます。
アラミド繊維シート工法を選定した理由
今回採用したアラミド繊維は、同重量で比較した場合に鋼鉄の数倍の引張強度を誇る高機能繊維です。
補強厚みはわずか数ミリ程度に収まるため、外構タイルや玄関ポーチとの取り合い部分を削る必要がありません。
基礎を解体して打ち直す大がかりな工事に比べ、騒音や粉塵、工期を最小限に抑えられます。
基礎の出っ張り形状に合わせて柔軟に追従できるため、障害物や角部が存在する現場でも確実な一体化を図ることが可能です。
よくある質問(FAQ)
まとめ:築年数と基礎形状に合わせた最適な補強選択
今回の杉並区の事例では、築35年を経過した布基礎の出隅部分に対し、躯体を壊さないアラミド繊維シート工法を採用しました。
基礎の角部分は応力が集中しやすい構造急変点であるため、下地調整から樹脂の圧着まで繊細な施工管理が性能を左右します。
基礎の劣化状態や建物の構造形式によって、選ぶべき補強工法や優先順位は物件ごとに異なります。
他社から高額な工事や基礎の全解体を提案された場合でも、工学的な根拠に基づいた別の補強手段が存在することは珍しくありません。
納得のいく判断を下すためにも、複数の専門業者による客観的な診断を取り入れることが大切です。
