住宅の足回りを支える基礎は、屋外に面した外側だけでなく、床下に隠れている内側の状態も同じように強度を左右します。
普段は目にする機会が少ない場所ですが、点検時にひび割れや耐力不足が見つかり、床下側からの手入れを検討するケースは珍しくありません。
今回は、床下の基礎立上り面に対してアラミド繊維シートを施工した現場を取り上げます。
大掛かりな重機が入らない床下空間で、どのような手順を踏み、開口部などの細部をどう納めたのか、実際の作業内容をもとに振り返ります。
- 重機やコンクリート打ち増しが難しい床下空間に対し、厚みを出さずに引張強度を高めるアラミド繊維シート工法を採用
- 応力が集中しやすい換気口(開口部)の角や土台との取り合いは、浮きや気泡が生じないよう手作業で入念に追従
- 下地清掃、プライマー塗布、シートの樹脂含浸、保護仕上げと工程を段階ごとに確実に踏むことで基礎との一体化を図る
床下の基礎立上りにアラミド繊維シートを選定した理由
基礎の補強工法にはいくつかの種類がありますが、今回の現場ではアラミド繊維シートによる補強を選択しました。
床下の空間は高さが限られており、真上には土台や大引きといった木部が通っています。
コンクリートを新しく打ち増すような工法を選ぶと、基礎の幅が広がることで床下の通気や点検時の移動ルートを塞いでしまう懸念がありました。
また、大掛かりな機材を床下に搬入するのも現実的ではありません。
アラミド繊維は、非常に薄いシート状でありながら高い引張強度を持つ素材です。
エポキシ樹脂を用いて基礎のコンクリート表面に直接貼り込むことで、基礎そのものの厚みをほとんど変えずに耐力を補うことができます。
床下の限られたスペースを維持しつつ、木部の構造材に干渉させずに施工できる点が、今回の現場条件に合致していました。
狭小な床下と換気口周辺における施工判断
基礎の立上りには、床下の通気を確保するための換気口が設けられています。
今回の現場でも、基礎の中央付近に開口部が存在していました。
換気口の周囲は、地震などの揺れや建物の荷重を受けた際に力が集中しやすい部分です。
開口部の四隅から斜めにひび割れが伸びる事例が多いのもこのためです。
平らな壁面だけにシートを貼って終わりにするのではなく、換気口の角や開口の内側までしっかり補強材を追従させることが欠かせません。
作業スペースが狭い床下では、体を横に倒しながら工具を動かすことになります。
無理な姿勢での作業が続くと手元が狂いやすくなりますが、角の部分に隙間やたるみが残ってしまうと、シート本来の性能が発揮されません。
換気口の立ち上がり角はシートが浮きやすい急所です。
角のラインに合わせてシートをしっかり押し込み、空気を完全に押し出しながら密着させました。
施工手順:下地処理から保護仕上げまで
アラミド繊維シート補強は、ただ貼れば強くなるというものではありません。コンクリートの表面とシートが完全に密着して初めて一体として機能します。
現場では以下の手順で作業を進めました。
基礎表面に付着している細かな埃や脆弱な層を取り除きます。
粉塵が残っていると樹脂の接着を阻害するため、隅々まで刷毛や集塵機を使って入念に清掃します。

コンクリート表面に下塗り用のエポキシ樹脂系プライマーを塗り広げます。
コンクリート内部への樹脂の過度な吸い込みを防ぎ、次に貼るシートとの接着性を高めるための処理です。

次に、保護・補強剤であるエポキシ樹脂を中塗りとして塗布し、基礎の寸法に合わせて裁断したアラミド繊維シートを立上り面に配置します。
上からエポキシ樹脂をたっぷりと含浸させ、専用の脱泡ローラーを転がしながら繊維の隙間まで樹脂を行き渡らせます。
気泡が残らないよう、中央から外側へ丁寧にしごくように作業を進めます。

含浸樹脂の硬化後、表面を保護するため保護・補強剤でを全面に塗布します。
湿気や空気から補強層を守り、長期的な密着状態を維持するための仕上げ工程です。
よくある質問(FAQ)
まとめ:床下の基礎状態に合わせた適切な補強の進め方
基礎の補強は、傷みの程度や床下の環境によって選択すべき方法が異なります。
今回の現場のように、換気口の位置や床下のクリアランスを考慮した上でアラミド繊維シートを選び、開口部や部材の境目を丁寧に納めることが確実な施工につながります。
もし訪問点検などで基礎のひび割れを指摘され、大掛かりな工事の提案を受けて迷っている場合は、すぐに結論を出さずに複数の視点から客観的な状態を見極めることが大切です。
建物の構造や床下の状況に本当に合っているのか、落ち着いて専門家の意見を聞き比べることをおすすめします。
