千葉県木更津市は、東京湾に面した金田や潮見、富士見といった沿岸エリアから、内陸の緩やかな丘陵地に広がる請西、清見台、ほたる野、真舟などの新興住宅街まで、場所によって地盤や周辺環境が大きく異なります。
今回基礎の調査と補強を行った現場は、木更津市内の住宅街に建つ築23年の木造2階建て住宅です。
2000年(平成12年)の建築基準法改正前後に建てられたこの年代の住宅は、地盤調査に基づいた設計が普及し始め、布基礎からベタ基礎への切り替えや、基礎パッキン工法による床下換気対策が定着し始めた時期にあたります。
「比較的新しい家だから基礎はまだ平気だろう」と考えられやすい築年数ですが、床下に潜って点検を行うと、この時期の構造ならではの経年変化やコンクリートのひび割れが見受けられることがあります。
- 築23年前後の住宅はベタ基礎や基礎パッキンが多く見られるが、コンクリート自体の収縮や微小な地盤変動によるひび割れは発生する
- 木更津市特有の沿岸部の湿気・潮風や、丘陵造成地における不同沈下の微小な応力が基礎立ち上がりに負担をかける場合がある
- ひび割れ表面の穴埋めにとどめず、基礎立ち上がりの耐力を高めるため「アラミド繊維シート補強工法」を選定した
- 基礎パッキンの通気開口を塞ぐことなく、既存の換気性能を維持したまま床下側からの施工を完結させた
木更津市で確認された築23年住宅の床下状況
点検口から床下内部へ進入し、外周部および内部の立ち上がり基礎を打診・目視で確認していきました。
基礎形式はベタ基礎で、土台とコンクリートの間には樹脂製の基礎パッキンが敷設されています。
昔の床下換気口タイプと比べると床下全体の風通しは保たれており、木部(土台・大引き・束柱)に目立った腐朽や白蟻の食害痕は見られませんでした。
一方で、基礎立ち上がりのコンクリート面には、幅0.3mm前後の構造クラックが複数箇所確認されました。
木更津市の内陸寄り、例えば請西や太田周辺の造成地では、切土と盛土の境目などでごくわずかな不同沈下の力が長年基礎にかかり続けるケースがあります。
また、金田や中島といった海沿いの軟弱地盤エリアでは、道路の大型車通行による微振動や地下水位の変動が影響を及ぼすこともあります。
今回の現場では、新築時から20年以上の年月を経てコンクリートの乾燥収縮が完了し、その後に地盤や建物の揺れなどで引っ張られた箇所にひび割れが開いてしまった状態でした。
築23年・新耐震基準以降の住宅に見られる基礎の状態
築20〜25年ほどの住宅において、基礎にひび割れが見つかった際の判断には特有の難しさがあります。
1981年以前の旧耐震基準や、1980年代の無筋コンクリート基礎であれば、「基礎自体の強度が根本的に不足している」と直感的に分かりやすい傾向があります。
しかし、2000年基準前後の鉄筋コンクリート基礎の場合、鉄筋が入っている安心感があるため、初期のひび割れが見過ごされがちです。
コンクリートは引っ張る力に対して非常に弱い素材です。
立ち上がりにクラックが入ると、その部分の断面性能は一時的に分断された状態に近くなります。
鉄筋が入っているため倒壊に直結することは稀ですが、ひび割れから空気や湿気が侵入し続けると、内部鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートが内側から割れる「爆裂現象」へと進行するリスクを抱えます。

アラミド繊維シート補強工法を選定した理由
今回の現場では、クラックにエポキシ樹脂を注入するだけの処理ではなく、基礎立ち上がりの表面に「アラミド繊維シート」を貼り付けて一体化させる補強工法を採用しました。
表面のひび割れを埋めるだけでは、今後大きな揺れを受けた際に同じ箇所が再び引っ張られて開く可能性がありました。
基礎全体の粘り強さを補う必要があったため、シートによる面補強を選択しています。
アラミド繊維シート補強を選定した主な理由は次の通りです。
- 引っ張り強度が非常に高く、基礎立ち上がりのせん断耐力(横にずらそうとする力)・曲げ耐力(曲げようとする力)を向上させられる
- 厚みがわずか数ミリのため、床下の狭い作業空間や土台際でも確実に施工できる
- 重機や生コンクリートの打設が不要で、建物内に住みながら床下から全工程を終えられる
- 基礎パッキンによる通気スリットの高さを邪魔しない
今回の住宅では、土台下に連続して基礎パッキンが並んでいました。
増し打ちコンクリート工法のように基礎幅を大きく広げる工法を採用してしまうと、この換気スリットを塞いでしまい、かえって床下の湿気環境を悪化させる懸念がありました。
既存の通気性能を損なわない薄型のアラミドシート補強は、この年代の住宅に適した判断といえます。
施工手順と床下での現場作業
実際の作業は、基礎表面の下地処理から上塗り保護補強仕上げまで、段階を踏んで進めました。

コンクリート表面のホコリや粉吹きを入念に清掃した後、アラミド繊維シートを密着させるためのエポキシ系プライマーを立ち上がり全面に塗布します。

次に、保護・補強剤であるエポキシ樹脂を中塗りとして塗布し、基礎立ち上がりの中央部に合わせてアラミド繊維シートをまっすぐに貼り付けます。
気泡を押し出し、コンクリート面に隙間なく追従させます。

貼り付けたシートの上からさらに保護・補強剤であるエポキシ樹脂を浸透させ、繊維と下地を強固に硬化させます。
外部の劣化要因から繊維を保護するため、均一な厚みで仕上げを行います。

写真の通り、基礎パッキンの通気穴直下をしっかりかわしつつ、ひび割れが発生していた立ち上がりの中央から下部にかけてシートを行き渡らせています。
床下の束石や木製の大引きが近接している環境でしたがしたが、障害物の位置を計算しながら手作業で確実に圧着を行いました。
よくある質問(FAQ)
まとめ:築年数の先入観にとらわれず、基礎の状態に合った対策を
築23年という年数は、住宅の構造としてはまだ新しさを残している一方で、コンクリートの乾燥収縮や初期の地盤変位が表面化しやすい節目でもあります。
2000年基準以降のベタ基礎だからと安心しきってしまうのではなく、床下の立ち上がりにどのような応力がかかっているかを見極めることが基礎補強の第一歩です。
今回の木更津市の住宅では、基礎パッキンによる床下換気を生かしながら、耐力不足が懸念される基礎立ち上がりへアラミド繊維シートを使用した基礎補強工事を行いました。
建物の構造や築年数、地域の地盤特性によって、選ぶべき工法や施工範囲は一件ごとに異なります。
もし訪問業者や工務店から基礎のひび割れを指摘され、提示された高額な工事内容に迷われている場合は、その劣化が本当に大規模な打ち直しを必要とするものなのか、客観的な専門家の視点から再確認してみることをおすすめします。
