埼玉県川口市にある木造住宅の床下に潜り、基礎の補強工事を行いました。
建物は築41年を迎えており、いわゆる新耐震基準へと切り替わった初期の建物にあたります。
床下点検口から進入して確認したところ、床面は土の上に砂利(バラス)が敷かれた布基礎の構造でした。
基礎立ち上がりのコンクリート面には、年月の経過に伴う表面の摩耗や細かいクラック、土壌からの湿気による黒ずみが見受けられる状態でした。
- 築41年が経過した布基礎に対し、建物を壊さず耐力を引き上げるアラミド繊維シート工法を採用
- 川口市の低地特有の湿気環境を考慮し、下地清掃からエポキシ樹脂の浸透・密着を徹底
- 既存の鋼製束や給排水管が密集する狭い空間でも、障害物をかわしながら立ち上がりの内側を補強
川口市の土地柄と築41年の布基礎に見られた状態
川口市は、南部の領家や元郷、青木、舟戸といった荒川・芝川の流域に広がる低地エリアと、北部の神根や安行、戸塚といった大宮台地に連なる丘陵地で地況が大きく分かれます。
低地エリアや谷筋の周辺は地下水位が比較的高い場所もあり、床下に湿気が滞留しやすい住宅も珍しくありません。
今回伺った現場も、土間コンクリートが打設されていない布基礎で、地面からの湿気が立ち上がり部分に影響を与えやすい環境にありました。
築40年を超えた住宅では、基礎のコンクリート自体の中性化が進み、外力に対する粘り強さが落ちているケースがあります。
現場では過去にリフォームで入れたとおっしゃられていた鋼製束が設置されていましたが、基礎立ち上がりそのもののひび割れや耐力低下まではカバーできません。
ひび割れ補修だけでなくアラミド繊維シートを選んだ判断
今回の現場で検討したのは、「表面的なひび割れを埋めるだけで済むのか、それとも基礎の耐力そのものを高める必要があるのか」という点です。
確認されたひび割れ自体は軽微なものもありましたが、築41年という年数を考慮すると、エポキシ樹脂の注入だけでは将来的な揺れに対して十分な補強効果を維持しきれない懸念がありました。
一方で、基礎の外側をすべて掘削してコンクリートを増し打ちしたり、室内の床を剥がして基礎を作り直す工事は、住まい手にかかる生活上の負担や費用が跳ね上がります。
そこで採用したのが、アラミド繊維シートによる基礎補強です。
アラミド繊維は、引張強度が鋼材の数倍以上ありながら非常に薄く、軽量な素材です。
これをエポキシ樹脂で基礎立ち上がりに直接貼り付けて一体化させることで、地震時に基礎へかかる引張力に抵抗できるようになります。
床下には配管や鋼製束が近くに迫っており、重機や大きな部材を持ち込むことはできません。
数ミリの厚みで施工できるシート補強だからこそ、こうした狭小部でも基礎の連続性を確保できます。
狭小な床下での施工工程
実際の作業は、粉じん対策と下地の乾燥状態を確認しながら慎重に進めました。

基礎表面のレイタンス(脆弱な微粒子層)や汚れを落とし、コンクリートを露出させます。
清掃後、エポキシ系の下塗り材(プライマー)を均一に塗布しました。
この工程を粗雑にするとシートがコンクリートと剥離してしまう可能性があるため、吸い込み具合を確認しながら規定量をしっかり染み込ませます。

プライマー硬化後、中塗り用の保護・補強剤を塗布した後、基礎立ち上がりの中央部に合わせてアラミド繊維シートを帯状に配置します。
奥に見える青い配管や手前の鋼製束に干渉しないよう位置を合わせ、含浸用エポキシ樹脂をシートの上から十分に塗り込みました。
気泡が残らないよう押さえ込み、シートと基礎を密着させていきます。

含浸樹脂の硬化後、コンクリートを保護補強するための上塗りを全面に塗布しました。
表面をグレーの保護層で均一に覆うことで、補強シートの保護とともに、湿気によるコンクリートのさらなる劣化を抑える役割を果たします。

施工箇所の奥や配管の裏側など、作業姿勢が取りにくい場所もありましたが、シートの浮きが出ないよう端部まで入念に転圧を行いました。
築40年前後の基礎補強に関するよくある質問
まとめ:古い基礎の状態を見極めて適切な補強を選択する
築41年が経過した住宅の布基礎は、単にひび割れの表面だけを補修しても、構造的な不安が残る場合があります。
かといって、基礎の増し打ちなどの大掛かりな補強がすべての現場で必要とは限りません。
今回の現場のように、床下の湿気環境、障害物の配置、基礎コンクリートの状態を正しく把握した上でアラミド繊維シート工法を選定すれば、住まいへの負担を抑えながら必要な耐力を補うことが可能です。
基礎のひび割れや劣化を指摘され、提示された工事内容や見積もりの妥当性に迷いを感じている場合は、一度現場の状況を冷静に見つめ直し、構造に即した補強方法が選ばれているか客観的な判断を仰ぐことをおすすめします。
