川越市の住宅街にある、築44年を迎えた木造住宅の現場です。
この年代の建物になると、基礎の立ち上がり部分にひび割れが入っていたり、表面が粉を吹いたように白くなっていたりすることが珍しくありません。
外側からは見えなくても、床下に入ると内側に筋のような割れ目が走っているケースもよく見られます。
今回は、畳を上げて床下へと潜り、基礎の状態を直接確かめた上で補強工事を行いました。
当時の木造住宅に多い「土の床下」という環境の中で、どのような手順で作業を進めたのかを振り返ります。
- 築44年の住宅で見られた基礎の縦ひび割れに対し、アラミド繊維シートを用いた補強を実施
- 床下が土のままの布基礎でも、下地を丁寧に整えて樹脂を含浸させることで強度を確保
- 基礎全体を壊して作り直すのではなく、負担のかかる立ち上がり部分を補強して建物を支える
- 築年数が経過した基礎は、外側だけでなく床下の状態を確認して施工範囲を決めることが大切
築44年の床下で確認した基礎の状態
点検口から床下に入ると、地面はコンクリートが打たれているベタ基礎ではなく、昔ながらの土が露出した布基礎の状態でした。
川越市周辺の昔からある住宅地では、こうした土間の造りが今も多く残っています。
コンクリートの立ち上がりを目で追っていくと、縦方向にすっと走るひび割れが確認できました。
幅自体は極端に開いているわけではありませんでしたが、表面だけでなくコンクリートの内部まで届いているような割れ方です。
昭和50年代の基礎は、現在のように太い鉄筋が組まれていないことも多く、地震の揺れや地盤のわずかな動きによって引っ張られる力に弱い特徴があります。
コンクリートは上から押し潰される力には耐えられますが、横に引っ張られたり裂けたりする力には脆い性質を持っています。
今回はこのひび割れ部分をそのままにするのではなく、引っ張る力に対抗できる補強材を貼り付ける判断をしました。
アラミド繊維シートを選んだ理由
基礎を強くする方法にはいくつか種類があります。
ひび割れの隙間に樹脂を流し込んで埋めるだけの作業もあれば、横に新しいコンクリートを打ち増す大掛かりな工事もあります。
今回選んだのは、黄色の帯のようなアラミド繊維シートをエポキシ樹脂で基礎の側面に貼り付ける工法です。
アラミド繊維は、軽くて薄い布のような見た目をしていますが、引っ張る強さは同じ太さの鉄の数倍にもなります。
防弾チョッキや橋の橋脚補強にも使われている素材です。
なぜこのシートを選んだのかというと、今回の基礎に必要なのが「ひび割れがこれ以上開かないように押さえ込む力」だったからです。
ひび割れに樹脂を入れるだけでは、将来大きな地震が来たときに、同じ場所やそのすぐ隣が再び引っ張られて割れてしまう恐れがあります。
かといって、床下に新しく分厚いコンクリートの壁を作るとなると、土を掘り起こして重機や大量の材料を運び込まねばならず、生活しながらの工事としては負担が大きすぎます。
薄くて強靭なシートを基礎の横腹に沿わせるように接着すれば、床下の狭い空間でも建物の足元をしっかり締め直すことができます。
施工手順と床下での作業の様子
床下は高さが低く、足場も土であるため、作業前の準備が仕上がりを左右します。
まずはコンクリートの表面についている砂ボコリやカビ、脆弱な粉っぽい部分を念入りに落とします。
表面に汚れが残っていると、後から塗る樹脂がコンクリートに吸い付かないためです。

下地がきれいになったら、接着剤の役割を果たすエポキシ樹脂を塗り込みます。
塗った直後はコンクリートが濡れたような深いグレー色に変わります。
この樹脂がコンクリートの細かな隙間に染み込み、シートとの密着性を高めます。

中塗り用の保護・補強剤を塗布した後、下地の樹脂が乾かないうちに、位置を合わせて黄色のアラミド繊維シートをまっすぐに貼り付け、空気を押し出しながら押さえていきます。

樹脂の重ね塗りと保護シートの上からさらに樹脂を塗り重ね、繊維の奥まで完全に染み込ませます。
樹脂が固まることで、繊維がカチカチの板のような硬さになり、コンクリートと完全に一体化します。

床下の地面が土の場合、作業中に土埃が舞って基礎に付着しやすいのが難点です。
シートを貼る直前まで基礎表面をきれいに保ち、繊維の中に空気が残らないよう、真ん中から外側へ慎重に気泡を抜いていきました。
施工範囲の判断:なぜこの場所を補強したのか
今回の工事では、床下の基礎すべてにシートをぐるりと貼り巡らせたわけではありません。
費用の兼ね合いもありますが、何よりコンクリートに特に力がかかりやすくひび割れが伸びていた区画を重点的に施工しています。
基礎のコーナー付近や、上屋の柱が乗って重みを受け止めている立ち上がり部分は、揺れがあった際にひずみが集中しやすい場所です。
逆に、目立った傷みがなく乾燥状態も良好な立ち上がりについては、今回は無理に手を加えず現状維持としました。
住まいの方にとっても、家全体を一気に工事するより、不安の大きい箇所から順序立てて手を入れていくほうが生活の負担を抑えられます。
どこまでは手を入れ、どこまでは様子を見ながら次回検討するのか、お客様としっかりとお話しながら現場で見極めることがとても大切です。
よくある質問
まとめ:川越市で築年数が経った基礎と長く付き合うために
築44年という年月を経た住宅の床下には、土の湿気や過去の揺れを受け止めてきた痕跡が刻まれています。
今回の現場では、縦に走っていたひび割れに対してアラミド繊維シートを密着させ、立ち上がりコンクリートが左右に引き裂かれる力に耐えられるよう補強を施しました。
基礎の工事というと「壊して新しく作り直す」という大きな工事を想像される方もまだまだいるかもしれませんが、傷んでいる箇所を見極めて適切な補強材を選べば、住み慣れた家をそのままの形で支え続けることができます。
もし他の業者から「基礎が古いからもう危ない」「すぐに全体を工事しないと家が傾く」と言われて不安を感じているなら、まずは床下のどの部分に、どのような理由で補強が必要なのかを落ち着いて確認してみてください。
基礎の状態は1軒ごとに全く異なります。
