栃木県小山市にある築39年の木造戸建て住宅にて、基礎コンクリートの中性化対策と耐震補強工事を実施しました。
外周部に幅の広いクラック(ひび割れ)は見られなかったものの、基礎表面が白く粉を吹き、手で触れると砂状に削れる初期劣化が進行している状態でした。
- 外観上の大きなひび割れがなくても、コンクリート内部の中性化は築30年を超えると進行する場合が多い
- 単なるモルタル補修では再劣化の懸念があるため、中性化抑止材とアラミド繊維シートを併用して耐力を向上
- 床下の湿気滞留を改善する調湿・防蟻処理を同時に施し、基礎構造の長期的な耐久性を確保
| 項目 | 内容 |
| 施工地域 | 栃木県小山市 |
| 建物構造・築年数 | 木造戸建住宅 / 築39年 |
| 基礎構造 | 布基礎 |
| 確認された症状 | 基礎コンクリートの中性化進行、表面の粉化・表層脆弱化、床下の湿気滞留傾向 |
| 採用工法 | 中性化抑止処理 + アラミド繊維シート工法(25cm幅) + 床下環境改善(調湿材敷設・防蟻防カビ・束補強) |
栃木県小山市の地域特性と築39年住宅に見られる基礎構造の特徴
栃木県小山市は思川や鬼怒川が流れる平坦な沖積平野に位置し、比較的地下水位が高く土壌水分を含みやすい土地柄です。
内陸性気候のため冬期は乾燥した冷たい季節風が吹く一方、夏期は高温多湿となり、床下の通気環境によっては湿気が長期間こもりやすい傾向が見られます。
今回施工した住宅は1980年代後半(築39年)の建築です。
1981年の新耐震基準導入以降の建物ですが、当時は現在主流である全面コンクリートの「ベタ基礎」ではなく、立ち上がり部分のみを鉄筋コンクリートや無筋コンクリートで立ち上げた「布基礎」が標準的でした。
床下地面に防湿フィルムや押さえコンクリートが施工されていないケースが多く、地面からの水蒸気が基礎コンクリートに直接触れ続けることで、経年による劣化を受けやすい構造的背景を持っています。
現地調査で判明した基礎コンクリートの中性化と床下の劣化状況
現地調査では、目視点検に加えて打診や表面強度の確認を行いました。
- 外周部基礎の粉化:表面のセメントペーストが分解し、触れると白い粉が付着する状態
- 表層モルタルの脆弱化:局所的な骨材の露出と小規模な欠損
- 床下の換気不足:空気の流れが停滞し、一部の土壌から湿気が立ち上がっている状況
- 基礎立ち上がりの強度低下:ひび割れは軽微なものの、表層硬度の低下を確認
調査時点では、基礎全体を分断するような構造クラック(幅0.5mm以上)や、鉄筋が露出して崩落するような重大破壊は起きていませんでした。
しかし、表面が砂状に崩れ始めている現象は、コンクリートの中性化が深部に向かって進んでいる明確なシグナルです。
構造耐力が致命的に損なわれる前段階の、適切な手入れが功を奏する時期と判断しました。
表面補修だけでなくアラミド繊維シート補強を組み合わせた理由
コンクリートは打設直後、強いアルカリ性(pH12〜13程度)を示し、この強いアルカリが内部の鉄筋の周りに保護膜(不動態皮膜)を作って錆の発生を防いでいます。
しかし、大気中の二酸化炭素(CO2)がコンクリート内部に侵入すると、化学反応によってアルカリ性が徐々に失われます。
これが中性化です。
中性化が内部の鉄筋位置まで到達すると保護膜が壊れ、湿気や酸素に触れた鉄筋がサビて膨張を始めます。
膨張した鉄筋が内側からコンクリートを押し壊す現象を「爆裂現象」と呼びますが、爆裂が起きてからでは基礎を削り落とす大規模な断面修復工事が必要になります。
今回の現場では、以下の理由から単一の補修ではなく複合工法を採用しました。
表面の粉を払い落としてモルタルを塗るだけでは、奥へ進む中性化を止められません。
アルカリ性を補う特殊薬剤を浸透させ、その上で引張強度に優れたアラミド繊維シートを一体化させて、基礎自体の粘り強さを底上げする判断を下しました。
- 樹脂注入のみを採用しなかった理由:注入対象となる明確なひび割れ幅が少なく、コンクリート自体の脆弱化に対する解決にならないため
- モルタル補修のみを採用しなかった理由:見た目の化粧直しにとどまり、基礎の曲げ耐力や引張耐力を補う強度が不足するため
- 打ち増し補強を採用しなかった理由:床下の作業空間が限られ、基礎幅を拡張することで換気や点検通路を塞ぐリスクがあったため
中性化抑止からアラミド繊維シート貼付までの施工手順
基礎の耐震性向上と再劣化防止を両立させるため、下地処理から環境対策までを一連の流れで施工しました。


基礎表面の脆弱層や汚れを高圧・手作業で清掃し、コンクリート内部にアルカリ付与機能を持つ中性化抑止材を塗布・含浸させます。


アラミド繊維を定着させるエポキシ系プライマーを均一に塗布し、コンクリート下地との密着性を高めます。


専用のエポキシ樹脂(中塗り)を塗布した上から、25cm幅の連続繊維シート(アラミド繊維)を気泡が入らないよう圧着します。


アラミド繊維シートを紫外線や外気から保護するため、保護補強材(上塗り)を丁寧に重ね塗りして硬化・一体化させます。


床下環境改善(調湿材敷設・防蟻防カビ・束補強)
基礎補強工事とは別に、土壌からの湿気上昇を抑える調湿材を敷設し、木部防蟻処理および劣化した束箇所の補強調整を行いました。
施工後は、基礎コンクリートの引張耐力が補強され、将来的な地震荷重に対する安全率が引き上げられました。
床下の湿度も安定域に収まり、木材の腐朽やシロアリのリスクを抑える環境が整いました。
築39年の基礎中性化と補強に関するよくある質問
まとめ:見えない基礎の中性化には構造補強と環境改善の両立が不可欠
今回の栃木県小山市の事例では、外観上に深刻な破損が見られない状態であっても、築39年の歳月と床下の湿気環境によってコンクリートの中性化が確実に進んでいました。
表面の化粧直しにとどめず、中性化抑止材による躯体の保護、アラミド繊維シートによる引張耐力の補強、そして床下の調湿処理を一体で行ったことが、長期的な住まいの安定につながります。
基礎の劣化状況や適切な補強工法は、築年数だけでなく、地盤環境やコンクリートの打設状態によって一棟ごとに大きく異なります。
ひび割れの有無だけで安易に判断せず、複数の専門的な視点を取り入れた客観的な調査を通じて、現状の建物構造に合致した処置を見極める姿勢が重要です。

