神奈川県相模原市中央区に建つ築34年の木造住宅において、床下調査を実施したところ、基礎換気口(通気口)の角部から地面に向かって斜めに伸びるひび割れが確認されました。
相模原台地の平坦な内陸部に位置するこのエリアは、昭和後期から平成初期にかけて造成された住宅地が多く見られます。
当時の木造住宅に見られる基礎構造を踏まえつつ、弱点となりやすい開口部への補強を実施した事例となります。」
- 築34年住宅の床下基礎換気口周辺に発生した斜めクラックに対し、エポキシ樹脂を低圧注入して内部空隙を充填。
- 断面欠損により応力が集中しやすい換気口・人通口周辺のせん断耐力を回復させるため、アラミド繊維シート工法による面補強を採用。
- 給排水配管が近接する床下の狭小環境において、先行注入・下塗り・中塗り・シート圧着・上塗りの5工程を確実に施工。
| 項目 | 内容 |
| 施工地域 | 神奈川県相模原市中央区 |
| 建物構造・築年数 | 木造2階建て / 築34年 |
| 基礎構造 | 布基礎(床下土壌露出) |
| 確認された症状 | 床下換気口下部の斜めクラック、開口部周辺の耐力低下懸念 |
| 採用工法 | エポキシ樹脂低圧注入工法 + アラミド繊維シート工法(4工程積層補強) |
築34年の住宅構造と相模原市中央区における基礎環境の特徴
1990年代初頭(築34年前後)に建築された木造住宅は、新耐震基準に適合しているものの、2000年に施行された建築基準法の改正(基礎の配筋仕様の明確化や地盤調査の義務化)より前に建てられています。
この年代の住宅では、立ち上がり部分のみにコンクリートを打設し、底面は土が露出した「布基礎」が多く採用されていました。
相模原市中央区は比較的強固な関東ローム層が広がる地域ですが、床下が土壌露出のままである場合、地面からの湿気が基礎コンクリートへ継続的に供給されます。
コンクリートは乾燥と湿潤の繰り返しによって微細な収縮変形を起こす性質を持ちます。
さらに、基礎の立ち上がり部分に設けられた換気口(床下通気口)や、点検時に人が床下を移動するための「人通口」は、コンクリートが物理的に切り欠かれた状態です。
建物の荷重や地震時の水平力が加わった際、こうした欠損部の角に応力が集中し、構造クラック(せん断ひび割れ)が発生しやすい環境が形成されます。
換気口・人通口にクラックが生じる構造的要因と補強工法の理由
基礎の開口部は、連続している基礎梁の一部が途切れているため、構造上の「弱点」となりやすい部位です。
特に人通口や換気口の角から斜め45度方向に走るひび割れは、せん断応力にコンクリートの引張強度が耐えきれなくなったサインとして捉えられます。
ひび割れを放置すると、内部の鉄筋まで大気中の炭酸ガスや湿気が到達し、鉄筋の錆びや爆裂現象を誘発する恐れが生じます。
また、地震の揺れによって開口部の変形が拡大し、上部構造を支える基礎の耐力低下を招くリスクも無視できません。
今回の現場では、以下の2つのアプローチを組み合わせた補強計画を立案しました。
- エポキシ樹脂低圧注入工法による構造一体化
クラックの表面だけをモルタル等で塞ぐ対症療法ではなく、内部のひび割れ深部まで液状のエポキシ樹脂をじっくり充填させます。
硬化した樹脂がコンクリート同士を強固に接着し、ひび割れ発生前の構造強度を復元させます。 - アラミド繊維シート工法によるせん断補強
鋼材の数倍に匹敵する引張強度を持つ「アラミド繊維シート」を基礎表面にエポキシ樹脂で一体化させます。
人通口や換気口周辺の広範囲に貼り付けることで、地震時に開口部へ集中する引張力を面全体で受け止め、ひび割れの再発や基礎の破断を防ぐ補強効果が得られます。
配管が近接する床下での多層補強工程と現場の施工配慮
床下空間は作業スペースが極めて限られており、今回の現場でも基礎の直近に金属製の配管が通っていました。
アラミド繊維シート工法は、重機を搬入できない狭小部でも施工可能な点が大きな長所となりますが、障害物周辺の下地処理や脱泡作業には細心の管理が求められます。
本現場では、エポキシ樹脂先行注入から表面保護まで、以下の5工程で補強を完了させました。

ひび割れに沿って注入用座金を等間隔に配置し、周囲を特殊シール材で密閉します。
その後、注入器具を取り付けて微圧で樹脂を深部まで押し込み、隙間なく充填を行いました。



コンクリート表面の脆弱層や粉塵を除去した上で、下地への浸透性に優れたプライマーを均一に塗布します。
基礎コンクリートと次工程の樹脂との密着力を高める処置となります。

中塗り樹脂を塗工後、寸法に合わせて裁断したアラミド繊維シートをシワなく配置します。
シートの網目から樹脂を含浸させつつ、内部の空気を徹底的に押し出して密着させました。

アラミド繊維シートの表面を湿気や外部環境から保護するため、保護補強になる上塗り樹脂を厚膜で塗り重ねて硬化させます。

換気口の角部は力が逃げにくいポイントです。
配管の裏側までシートが浮いて空気溜まりが残らないよう入念に転圧を行いました。
よくある質問(FAQ)
まとめ:開口部クラックの補修は構造特性を踏まえた客観的診断から
基礎の換気口や人通口に現れるクラックは、単なる美観の劣化にとどまらず、住まいを支える基礎の耐力低下を示唆する重要なシグナルです。
建物の年代や床下の障害物状況、ひび割れの深さによって選ぶべき工法は異なります。
表面を埋めるだけの簡易補修で済むのか、あるいは面補強を施して耐力を底上げすべきなのかは、基礎全体の構造を見極めた判断が欠かせません。
床下の状態は普段目に見えない領域だからこそ、診断結果や補修方法が業者によって大きく分かれるケースが見られます。
提示された見積もりや工事内容に疑問を抱いた際は、中立な技術的見地から複数の専門意見(セカンドオピニオン)を取り入れ、自宅の基礎構造に真に適した解決策を比較検討することをおすすめします。
